「役に真摯に向き合い、使命感を持ってパフォーマンスする」 ミュージカル『メンフィス』主演 濱田めぐみインタビュー

2017年12月2日(土)~17日(日)の期間、15年に日本初演を迎えて好評を博したミュージカル『メンフィス』の再演が新国立劇場 中劇場(東京都渋谷区)にて行われる。初演同様、ヒロインの黒人シンガー・フェリシア・ファレル役を演じる濱田めぐみが、このほどインタビューに応じた。日本のミュージカル界を代表する大女優であり、昨年デビュー20周年を迎えた濱田は、常にストイックに役と向き合い、オーディエンスに「想像させる」パフォーマンスが大切だと語ってくれた。『メンフィス』への意気込み、そして彼女の志をぜひ感じてほしい。


濱田めぐみ


当時の社会問題を真剣に受け止め、大事にフェリシアを演じていく

 
――濱田さんは2015年の『メンフィス』初演でもフェリシア役で出演されました。前回と比べて、今回の再演はどのような気持ちで演じていきたいですか。
 
濱田めぐみ(以下濱田) 基本的には、何か新たに変えようとは思っていません。初演から2年半が経過し、その間に世間ではさまざまな出来事があり、皆さん色んな経験をしているので、お客様の感じ方も私の表現の仕方も変わってくると思います。ですから、前の演技を踏襲するのではなく、そのときの自然体で役を捉えていきたいですね。
 また、前回やり切れなかった課題が私の中にあるので、そこはチャレンジしていきます。
 
――どういうところが課題だと思っていますか。
 
濱田 前回は、立ち上げて作品にするだけで精一杯でした。フェリシア・ファレルという女性が受けてきた差別やそこで生まれる悲しみと苦しみ、産まれてきたときから差別を受ける境遇などを、もっと自分の中に落とし込んで演技したいと思っています。日本人である私が経験していないこと、フェリシアの思いや感覚を役に近づけて演技するために、人種差別の歴史や時代背景など、自分の知れる範囲の知識はすべて吸収して舞台に立ちたいです。それは稽古場の作業ではなく、例えば人種差別をテーマにした書籍や映画に触れるなど、本当に自分がその問題を真摯に受け止めて、大事にフェリシアという女性を演じることに尽きます。リアリティを持って望みたいですね。
 
――真摯に取り組んでいく、ということですね。
 
濱田 そうですね。でないと、(舞台を)やる意味がないと思っています。これは『メンフィス』に限ったことではなく、私は舞台でパフォーマンスをするという意識よりも、「お客様に何かを提示しなければいけない」という使命感があります。お客様はお金を支払って、何かを求めて自分の人生の時間を提供してくださる。そこで、お客様が求めているちょっとした“きっかけ”になることが舞台上で起こらない限り、意味がないと思うのです。そのリアルな瞬間をお客様は体験しに来てくださるので、中途半端なことはできないし、役についてもストイックに掘り下げていきたいですね。


「自分がもしフェリシアだったら」と想像して観劇してほしい

 
――フェリシア役を通じて、オーディエンスに一番伝えたいことは何ですか。
 
濱田 それは実は、(どの舞台も)私の中で言わないことにしています。もちろん、私の中で大事にしているテーマはありますが、お客様が何を感じるかは千差万別。それがその人の真実であり、お客様と私の絆だと思っています。
 舞台が持っているメッセージ性というのはとてつもなく大きく、役や作品からだけでなく、役から滲み出る役者の生き様や考え方を通じて感じる部分もある。その部分を、「私はこういう風にフェリシアを演じるので、この場面で乗り越えた強さを感じてください」と伝えるのではなく、お客様に「想像してもらう」ことが肝要だと思っています。フェリシアであれば、例えば「もし自分が肌の色が違って生まれて、差別を受けるという逆境の中だったら、自分ならどうするだろう」などと。時代背景も国も価値観も違う中で、どのようにお客様にリアリティを持ってもらうか。これは、役者が一番苦しまなくてはいけない部分であり、手を変え品を変え、現代の日本人が「なるほど」って思ってもらえるものを私たちはパフォーマンスするつもりです。
 フェリシアのどこに共感してもらえるか。例えば、作品の最後でフェリシアが旅立ちますが、そこの気持ちが「私もフェリシアだったそうするかもな」って感じてもらえると良いですね。そのような共感がそれぞれの役に得られると、「この舞台は成功なんだろうな」と思います。
 
――そんな『メンフィス』がいよいよ再演を迎えます。一番の魅力や見どころについて伺いたいです。
 
濱田 作品全体の雰囲気も良いですが、やっぱり音楽が素晴らしい。米国のロックバンド「ボン・ジョヴィ」のメンバーであるデヴィッド・ブライアンが手掛けるソウルフルな音楽は、例えばドライブのときでも普通に聴けますし、私自身、演目の曲は稽古場以外では聴かないようにしていますが、『メンフィス』の曲はずっと流していられるんです。「Memphis Lives in Me」とか、山本耕史さんが日本語で歌ってもとても合うし、誰もが良い曲と思えるのが一番の魅力だと思います。翻訳・訳詞の吉川徹さんの言葉選びも絶妙です。
 

濱田「心の中に何かの“思い”を持って帰れるような作品にしたい」

 
――この作品は、「現状打破」というのがテーマの1つになっていると思います。白人至上主義だった米国で歌手として成功をめざす黒人のフェリシア、当時タブーだったブラックミュージックをメンフィスの町中に流した白人の主人公ヒューイなど。そこで、濱田さんは昨年デビュー20周年を迎えて、これまで挫折したことや閉塞感、立ち直れないと思ったことなどさまざまな逆境も経験されてきたと思いますが、濱田さん自身がこの作品のテーマと共感するところはありますか。
 
濱田 私は劇団四季に所属していたときから、ブロードウェイやロンドンの作品の日本初演を任されることが多いのですが、初日の前夜は孤独感や絶望感、疎外感、「誰にも頼れないしやる以外にない怖さ」に毎回襲われます。なぜなら、初演初日の出来栄えが、世界の中で比較され、日本のクオリティや評価に直結するからです。
世界は、「日本の『メンフィス』は?」「日本の『アイーダ』は?」という横並びの見方で、お手並み拝見というような感覚で初日公演を観に来ます。そこでの評価は、その後の作品の存続にも繋がるので、「失敗するわけにはいかない」というプレッシャーと闘いながら、「それを覆さなきゃ」という打破の気持ちで公演に挑みますね。デビューして20年が経ちますが、そこは毎回思うところです。日本の演劇界やミュージカル界を背負うつもりはなくても、背負ってしまうんですよね、初日の日に。
 
――最後に、公演を楽しみにしているファンに一言。
 
濱田 客席にいて踊りだしたくなるような、なおかつ、心の中に何かの“思い”を持って帰れるような作品にしたいと思っています。これは劇場でしか味わえない空間ですので、ぜひ私たちのパフォーマンスを観に、劇場へ足を運んでください。お待ちしております。
 
 
<濱田めぐみ・プロフィール>
1972年生まれ、福岡県出身。95年12月、劇団四季オーディションに合格。抜群の歌唱力と将来性が認められ、3カ月後の96年2月、『美女と野獣』ヒロイン・ベル役に大抜擢され劇団四季デビュー。その後、劇団四季の初演『ライオンキング』、初演『アイーダ』、初演『ウィキッド』の三作品でヒロインを演じた。伸びのある歌唱力と定評のある演技に加えタップダンスもこなす。退団後も、数多くのミュージカルで活躍している。第40回菊田一夫演劇賞、第66回芸術選奨演劇部門文部科学大臣賞第24回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。
 
(取材・文・撮影/T-FAN SITE岩瀬駿斗)
 

■ミュージカル『メンフィス』とは
トニー賞作品賞など受賞した名作ミュージカル 再演は山本耕史も演出を手掛ける
 
1950年代の米テネシー州メンフィスで、当時タブーとされた黒人の音楽であるブルースを、ラジオやテレビ番組に紹介した実在の白人ラジオDJデューイ・フィリップスの半生をモデルに描いた作品。2010年にトニー賞作品賞など4冠を獲得した。
15年に日本初演を迎え、好評を博した本作を、ストーリーや米国のロックバンド「ボン・ジョヴィ」のメンバーであるデヴィッド・ブライアンが手掛けるソウルフルな音楽はそのままに、初演からさらに磨きをかけて再演! 前回に引き続き、米国で初めて黒人音楽をラジオで紹介した伝説のDJヒューイ・カルフーンを山本耕史が、ヒューイの恋する黒人シンガー、フェリシア・ファレルを濱田めぐみが演じる。さらに、待望の再演となった今回は、主演の山本耕史が演出も手掛け、新演出での上演となる。

 
<『メンフィス』Tチケット販売概要>
【会場】新国立劇場 中ホール(東京都渋谷区)
【日程】
2017/12/02(土) 17:30
2017/12/04(月) 14:00
2017/12/06(水) 14:00 / 18:30
2017/12/09(土) 17:30
2017/12/11(月) 14:00 / 18:30
2017/12/13(水) 14:00
2017/12/14(木) 14:00 / 18:30
2017/12/15(金) 14:00
 
【販売期間】2017/10/2(月)10:00~各公演5日前23:59まで
 
【チケット料金】
S席 11,500円(税込)
※お座席は公演当日ご入場時のお知らせとなります
※未就学児童入場不可
Tポイント5ポイント+ボーナスポイント700pt
さらにさらに!「STAGE×T-FAN」有料サービス登録者なら+800pt
Tチケット購入ページはこちら:https://fan.tsite.jp/ticket/171202MEN
Tポイントがザクザク貯まる「STAGE×T-FAN」の登録はこちら:
https://stage.fan.tsite.jp/
 
【出演者】
山本耕史
濱田めぐみ
ジェロ
米倉利紀
伊礼彼方
栗原英雄
根岸季衣 ほか

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